前田慶次郎 その11 「猿のヒゲを引っ張る」

戦国風流武士「前田慶次郎」その11

「猿のヒゲを引っ張る」

慶次郎が騒ぎを静めて帰るまで心静かにひとり酒を酌み続けていた人物は、この屋敷の主人ではない。

1ヶ月ほど前に京から来て滞在している本阿弥光悦であった。

光悦は前田家から7百石の禄を受けて、その本業なる刀剣の研ぎと拭いの御用をつとめているので、年に

1回か2回、こうして加賀に来るのであった。

三献の茶の秀吉(長浜駅前の像)
to.豊臣秀吉・三献の茶

光悦は稀世の天才芸術家です。

父祖代々の家業である刀剣の鑑定、研ぎ、拭いにかけて優れていたということは言うまでもなく、その他、

書道、蒔絵、茶の湯、製陶、歌道などの一流の達人であったので、趣味を同じくする慶次郎は尊敬して、

その人が加賀に来ている間はいつもこうして訪問し、風雅談にふけるのであった。

光悦はこの時、35歳であった。

「どうしたのです」

慶次郎が帰ってくると、光悦が聞いた。

慶次郎は、ことの顛末を話しすると、

「酒の席でこんなことは申したくないのですが、どうも、はなはだ御評判が悪いですぞ」

「どの評判でしょう」

「そこ様は去年、小田原陣でひどい悪戯をなすって、関白殿下に嫌な顔をされなすったというではありま

せんか」

「嫌な顔ではありません。なかなかご機嫌でした。大判1枚、褒美にいただいたくらいですから」

「ハハハハハ、関白殿下としては御身分がら、そんなことでお腹を立てなさる訳にもまいりますまいから、

機嫌のよい顔をなさったろうし、ご褒美もくださいましたろうが、初めは随分嫌な顔をなすったと聞きまし

たぞ」

「だから、やってみたかったのです。怒りたい時も怒れず、笑いたい時も笑えず、心にもない芝居をせね

ばならん、不自由であろうな、この猿め! と、ムラムラと来ましたのでね。拙者の持病ですな。ハハ、

ハハ、ハハ」

「関白殿下をからかうなぞ、無茶にも程があります。虎のヒゲを引っ張るようなものではありませんか」

「虎のヒゲではありませんな。猿のヒゲをですな。しかし、猿にヒゲがありますかな」

光悦は噴出してしまった。

「やってみましょうか」

と、慶次郎は箸を短く折って口に含んだ。

すると、その端正な顔は忽ち猿そっくりになった。

「どうです、似ているでしょう」

と言って立ち上がり、扇を広げ、歌いながら舞い始めた。

よくも猿の形を写したものだ。ちょいと手を曲げたり、足を上げたり、クルリと目玉を動かす仕草に、そっ

くりそのままの感じが表れて、笑うまいとしても笑わずにいられない出来栄えであった。

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≪昨日の解答≫
昨日の正解:大手堀
城の周囲には、大手堀、いもり堀、百間堀、白鳥堀が存在しましたが、現存するのは大手堀のみです。
他の3つの堀は明治時代末から大正時代にかけて埋め立てられ道路などになった。このうち、いもり堀は復元作業が行われ、2010年4月に再び水が張られています。

≪本日の問題≫


                           <参考文献:戦国風流武士 前田慶次郎(海音寺潮五郎暑)>
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こんばんは~

前田慶次郎って、愉快な人物ですね~。
いつも面白く読ませていただいてます。

とても楽しみにしています(´∀`*)

aries327 さま

こんばんは~

いつもありがとうございます。
慶次郎さんは、みなさんに選んで頂いただけあって、
愉快な人ですよね!♪

前田家を出奔した後も、痛快なことをやってくれます。☆
ただ逸話が殆どで、できるだけ記録に残っている部分を
選択し、記事になるように心がけています・・・。
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