前田慶次郎 その12 「己のために生きる慶次郎」

戦国風流武士 「前田慶次郎」 その12

「己のために生きる慶次郎」

翌日、慶次郎は登城して無断で馬を借りた詫びを言うと、利家は苦りきったまま返事をしなかった。

“ははあ、怒ってござる”

と思ったが、一応は耳に入れたことなので、さっさと引き下がって来ると、いつの間に来たのか家老の村井

又兵衛が待っていた。

見るからに頑丈そうな爺様だ。

「慶次郎様」

利家がまだ小身の頃から仕え、今では家老として1万2千石の身分だが、利家に仕える以前は慶次郎の父・

利久の家来であったから、慶次郎には大変ていねいな言葉使いをするのであった。

「なんだ、爺や」

「お前様、今夜ひまでござるか」

「・・・そうだな、別段の用事はない」

「それでは、日の暮れる時分から、爺の家に来てくれ」

また、お説教を聞かされるらしいと思ったが、こうなると後ろは見せられない性質だ。

「まあ、行こう。如才はなかろうが、後で酒を飲ませるだろうな。お説教の聞かせっぱなしはゴメンだぞ」

苦虫を噛み潰したような顔をして、老人は答えなかった。

金沢城
ka.20100404 金沢城 002

この見当に狂いはなかった。

「お前様のことを、あれは昔のことを根に含んで、殿様に嫌がらせをしてなさると、世間で申していることを

御承知か」

言うだけ言わせれば気が済むだろうと、高を括って言うに任せていたが、これには慶次郎も驚いた。

「ほんとか」

「爺がウソを言っていると思いか」

慶次郎は心外至極であった。つまり世間では相続問題についての不平のため、利家の迷惑になるような

ことや当て付けをしていると見ているのだという。

激しい口調で言い出した。

「おれにはそんなケチな根性はさらにない。そんな根性をおれは何よりも憎んでいる男だ。考えてもみてく

れ、男たる者がそんな根性を抱きながらその家の禄を食んでおられるものかどうか。おれは男の中の男を

持って自ら任じている男だぞ」

残念千万であった。

どうして世間の奴らはおれのこの心が判らないのだろうと。胸を断ち割って見せたい思いであった。

「爺には、お前様のお気持ちはよく判っています。しかし、世間の口に戸を立てられませんぞ。それ故に、

慎んだが上にも身を慎んでいただきたいのでござる。今のような御行状だと、世間は何を言い立てられる

かわかりませんぞ・・・」

村井はくどくどと、老臣らしく言い立てた。

慶次郎の感情はもう平静に戻り、老人の繰言をうるさいと思った。

だからと言って、行状を改める気は毛頭ない。どんなに世間から褒められようと一身の栄達があろうと、

世間の機嫌を取っての生き方をする気にはなれない。

“そんな生き方は他人のために生きるのであって、自ら生きることにはならないと思うのだ。あくまでも己

の心に従い、己の心のままに生きてこそ、自ら生きるというものだ。”と思うのだ。

「わかった、もう言うな。以後は大いに気をつける」

「約束の酒を飲ましてくれ」

仕方のない人だと言いたげに、また溜息をついて村井は手を叩いた。


慶次郎の前田家出奔は、この辺にあったのでしょうか・・・。

sakura 20120814 001

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≪昨日の解答≫
昨日の正解:名胡桃事件
名胡桃城を沼田城代となった北条の猪俣邦憲が、重則の家臣を寝返らせて名胡桃城を奪取します。(名胡桃事件)。これが惣無事令に違反したとして秀吉の怒りを買い、翌1590年に小田原征伐が行われます。

≪本日の問題≫


                           <参考文献:戦国風流武士 前田慶次郎(海音寺潮五郎暑)>
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