前田慶次郎 その30 「慶次郎、上杉家臣に」

戦国風流武士 「前田慶次郎」 その30

「慶次郎、上杉家臣に」

兼続は初対面の挨拶をした後、暫く何くれと四方山話をしていた。

兼続は文学のたしなみも豊かな人物だ。朝鮮の役で渡海した時、五臣註の「文選」の版木と、宗版の「史記」

を持って帰っている。

話は学問の話しから、その話になった。

「やあ、それはよいものを持ってお帰りになりましたな。一度見せていただくわけにはまいりますまいか」

と慶次郎が言うと、直江が、

「いつでもお目にかけましょう。しかし、当地にはありません。国もとへ持って行ってあります」

暫く話は、それで持ちきりとなった。

ma.前田慶次郎 12

やがて、兼続は、

「好きな道とて、横道の話がつい弾んでしまいました。用談にかかりましょう」

と容をあらためて、笑いながら言った。

「貴殿、浪人暮らしに飽きが来られて、御仕官の思召しが出られたと伺ってまいりましたが、そうですかな」

慶次郎は無言のまま瞳を沈めて、兼続を見た。

「何を以って、そうお考えですか?」

「幸若舞の噂を聞きましたので、値頃な買い手をお持ちであると思いましてな」

「・・・・・・」

こんどは慶次郎は答えない。相手を見つめているだけです。

「秋つきれば冬、冬つきれば春、来年の春あたりの花はお見事であろうと、お考えになっているらしいと思い

ますが、いかが」

慶次郎は破顔した。

「御明察。それで、拙者を買入にお見えという次第ですな」

兼続は頷いた。

「5千石ではいかが?加賀の御本家で、そのお高と伺っていますが」

慶次郎は頷いた。

「ようござろう。5千石は数年前のこと。あの頃に比べればいくらかましな人柄になっているつもりでござる

が、不識庵謙信以来の御家中での花見は、ひとしおなもののように存じられる。文選の版木や史記も拝見

したい。手を打ちましょうぞ」

「早速の御承引、かたじけのうござる。さぞや主人も喜ぶことでござろう」

兼続は嬉しげに言ったが、すぐ

「ところで、性急なようでござるが、主人吉左右のほどをお待ちかねています。如何でござろう。これより伏

見にお出にあって、見参していただけますか」

随分せわしない話だが、これは上杉景勝がどんなに自分を幕下に招致したがっているか示すものだ。気に

入った。

「よろしゅうござる。早速にまかり出ましょう。支度をいたす間、暫くお待ちくだされたい」

と言って、客間を去った。

sakura 20120911

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『戦国クイズ』

≪昨日の解答≫
昨日の正解:直江状
これは超有名ですね。
家康を激怒させ、会津遠征を決意させるきっかけとなった返書「直江状」の文面は後世の偽作、改竄の可能性が指摘されていますが、家康の上杉征伐を諌止した豊臣奉行衆の書状には「今度、直江所行、相届かざる儀、ご立腹ご尤もに存じ候」「田舎者に御座候間、不調法故」などとあることから、家康を激怒させた兼続の書状が存在したことは事実のようです。

≪本日の問題≫


                           <参考文献:戦国風流武士 前田慶次郎(海音寺潮五郎暑)>
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