前田慶次郎 その55 「出雲阿国」
戦国風流武士 「前田慶次郎」 その55
「出雲阿国」
両手をついて聞いていた山三郎は、暫くうつむいて平伏していたが、直ぐ涙ぐんだ声で言った。
「嬉しいことを申してくださいました。てまえも相当強い覚悟を持ってこの道に踏み込んで来たのであります
が、かれこれと世の人や知り人らに言われますと、つい迷いが出まして…しかし、かねてからてまえが最
も羨しいと申し上げているお二方にそう言っていただいて、この上の喜びはございません。もう迷うことでは
ございません。ありがとうございました。」
「この上とも、しっかりおやりください。歌舞伎踊りは、これからももっともっと栄え、日本人の一番大きな楽
しみになることに相違ありませんぞ」
酒が勢いよくまわり始めた。
出雲阿国

今日の演技の批評やら、山三郎の将来の抱負やら、活発な談話が交わされている時、左右に歌舞伎女を
2人従えて、新しい膳をささげ持って阿国が出てきた。
山三郎は阿国を紹介した。
阿国は仔細を見ると、そう顔立ちのよい女ではなかった。
下ぶくれ気味のその顔は鼻は低いし、口が大きすぎるし、どちらかというとお多福めいていた。
しかし、恐ろしく華やかな美しさがあった。
抜けるように色が白く、唇が紅く、真っ黒でみずみずしい大きな目をし、大がらで肉付きのよい体であったが、
舞で鍛えた身のこなしが際立っていたからであったのかも知れない。
三味線と笛が持って来られ、山三郎が器用な手つきで三味線を弾き、女ひとりが笛を奏で、阿国が舞扇を
持って立ち上がり、酒宴はにぎやかに続けられた。

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『戦国クイズ』
≪昨日の解答≫
正解:藩内のトラブルに巻き込まれた
名古屋山三郎は、森忠政から関係の悪化していた重臣・井戸宇右衛門の殺害を命じられますが、逆に宇右衛門に切り伏せられ死亡しています。享年は28とも32歳とも伝わります。
山三郎は武士を続けていたので、阿国とは結婚していないという説もあります。
≪本日の問題≫
<参考文献:戦国風流武士 前田慶次郎(海音寺潮五郎暑)>
「出雲阿国」
両手をついて聞いていた山三郎は、暫くうつむいて平伏していたが、直ぐ涙ぐんだ声で言った。
「嬉しいことを申してくださいました。てまえも相当強い覚悟を持ってこの道に踏み込んで来たのであります
が、かれこれと世の人や知り人らに言われますと、つい迷いが出まして…しかし、かねてからてまえが最
も羨しいと申し上げているお二方にそう言っていただいて、この上の喜びはございません。もう迷うことでは
ございません。ありがとうございました。」
「この上とも、しっかりおやりください。歌舞伎踊りは、これからももっともっと栄え、日本人の一番大きな楽
しみになることに相違ありませんぞ」
酒が勢いよくまわり始めた。
出雲阿国

今日の演技の批評やら、山三郎の将来の抱負やら、活発な談話が交わされている時、左右に歌舞伎女を
2人従えて、新しい膳をささげ持って阿国が出てきた。
山三郎は阿国を紹介した。
阿国は仔細を見ると、そう顔立ちのよい女ではなかった。
下ぶくれ気味のその顔は鼻は低いし、口が大きすぎるし、どちらかというとお多福めいていた。
しかし、恐ろしく華やかな美しさがあった。
抜けるように色が白く、唇が紅く、真っ黒でみずみずしい大きな目をし、大がらで肉付きのよい体であったが、
舞で鍛えた身のこなしが際立っていたからであったのかも知れない。
三味線と笛が持って来られ、山三郎が器用な手つきで三味線を弾き、女ひとりが笛を奏で、阿国が舞扇を
持って立ち上がり、酒宴はにぎやかに続けられた。

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≪昨日の解答≫
正解:藩内のトラブルに巻き込まれた
名古屋山三郎は、森忠政から関係の悪化していた重臣・井戸宇右衛門の殺害を命じられますが、逆に宇右衛門に切り伏せられ死亡しています。享年は28とも32歳とも伝わります。
山三郎は武士を続けていたので、阿国とは結婚していないという説もあります。
≪本日の問題≫
<参考文献:戦国風流武士 前田慶次郎(海音寺潮五郎暑)>
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