前田慶次郎 その58 「江戸には、銭湯があった」
戦国風流武士「前田慶次郎」その58
【江戸には、銭湯があった】
宿舎と定められた芝の浄土宗の寺で、上杉家の家臣等は外出から帰ると、陰鬱な会話ばかりボソボソと交
わしていた。
ある日のこと、一人が外出先から帰って来た。ひどく綺麗で血色のよい顔になっている。
「おや、おぬし、えらいいい顔をしとるのう。酒でも飲んできたか」
と聞くと、
「風呂に入って来たのじゃ」
と答えた。
むし湯(大分鉄輪むし湯)

「風呂? 誰がそんなご馳走をしてくれたのじゃ」
「誰のご馳走でもない。銭を出して入って来た」
「銭を出して?」
「ああ、銭湯というものがあるのじゃ」
「なんじゃと?」
この問答を聞いて、皆がゾロゾロと集まってきた。
「そりゃ本当か」
「本当に銭を出せば風呂に入れてくれるところがあるのか」
「どこにあるのじゃ、それは」
寄って集って質問する。
「ほんとうじゃとも、永楽3文で入れるのじゃ」
「どこじゃ、それのあるところは」
「どこというて、口では言えん。行くなら、明日わしが連れて行こう」
「ぜひ連れて行ってくれい。頼むぞ」
われもわれもと志願者が出て来て、たちまち5、6人になった。
風呂は当時ではなかなか貴重なものでした。
この頃は「風呂」とだけ言った場合は、“むし風呂”のことで、今日の風呂はとくに「水(すい)風呂」といった。
「風呂」はその装置も複雑であり、これを焚くには相当多額な費用を要したので、普通の家庭には勿論ない。
うんと裕福な家だけが湯殿を持っていて、そういう家がご馳走として入れてくれる以外に一般の人は入る機
会はなかったのです。
ですから、上杉家の家臣等も、もし銭を出して入れるものなら、一浴して旅の垢を落したいと思ったのでしょう。

ランキングに参加しています

にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます。
『戦国クイズ』
≪昨日の解答≫
正解:3000人
景勝は直江兼続に2万~2万4千余の軍勢を預け、最上領侵攻を開始した。
これに対抗する最上軍は7,000余(実際は小野寺義道を牽制するため庄内に出兵していたため、さらに少なく3,000余)でしかなかったが、上杉軍に対して義光は2,000挺もの鉄砲を駆使して抗戦しています。
≪本日の問題≫
<参考文献:戦国風流武士 前田慶次郎(海音寺潮五郎暑)>
【江戸には、銭湯があった】
宿舎と定められた芝の浄土宗の寺で、上杉家の家臣等は外出から帰ると、陰鬱な会話ばかりボソボソと交
わしていた。
ある日のこと、一人が外出先から帰って来た。ひどく綺麗で血色のよい顔になっている。
「おや、おぬし、えらいいい顔をしとるのう。酒でも飲んできたか」
と聞くと、
「風呂に入って来たのじゃ」
と答えた。
むし湯(大分鉄輪むし湯)

「風呂? 誰がそんなご馳走をしてくれたのじゃ」
「誰のご馳走でもない。銭を出して入って来た」
「銭を出して?」
「ああ、銭湯というものがあるのじゃ」
「なんじゃと?」
この問答を聞いて、皆がゾロゾロと集まってきた。
「そりゃ本当か」
「本当に銭を出せば風呂に入れてくれるところがあるのか」
「どこにあるのじゃ、それは」
寄って集って質問する。
「ほんとうじゃとも、永楽3文で入れるのじゃ」
「どこじゃ、それのあるところは」
「どこというて、口では言えん。行くなら、明日わしが連れて行こう」
「ぜひ連れて行ってくれい。頼むぞ」
われもわれもと志願者が出て来て、たちまち5、6人になった。
風呂は当時ではなかなか貴重なものでした。
この頃は「風呂」とだけ言った場合は、“むし風呂”のことで、今日の風呂はとくに「水(すい)風呂」といった。
「風呂」はその装置も複雑であり、これを焚くには相当多額な費用を要したので、普通の家庭には勿論ない。
うんと裕福な家だけが湯殿を持っていて、そういう家がご馳走として入れてくれる以外に一般の人は入る機
会はなかったのです。
ですから、上杉家の家臣等も、もし銭を出して入れるものなら、一浴して旅の垢を落したいと思ったのでしょう。

ランキングに参加しています

にほんブログ村
いつも応援ありがとうございます。
『戦国クイズ』
≪昨日の解答≫
正解:3000人
景勝は直江兼続に2万~2万4千余の軍勢を預け、最上領侵攻を開始した。
これに対抗する最上軍は7,000余(実際は小野寺義道を牽制するため庄内に出兵していたため、さらに少なく3,000余)でしかなかったが、上杉軍に対して義光は2,000挺もの鉄砲を駆使して抗戦しています。
≪本日の問題≫
<参考文献:戦国風流武士 前田慶次郎(海音寺潮五郎暑)>
- 関連記事
-
- 前田慶次郎 その60 「慶次郎の威嚇」 (2012/11/01)
- 前田慶次郎 その59 「お風呂に入れず」 (2012/10/31)
- 前田慶次郎 その58 「江戸には、銭湯があった」 (2012/10/30)
- 前田慶次郎 その57 「江戸城下」 (2012/10/26)
- 前田慶次郎 その55 「出雲阿国」 (2012/10/25)
スポンサーサイト
コメントの投稿
銭湯の先頭で戦闘せんとこう(訛)
昔は現代のように自動でお湯が出たり、
ガス発電で沸かし直しができませんでしたからねぇ。
お風呂の準備だけで、
かなりの労力と時間がかかったことでしょう…。
あ~!温泉入って牛乳飲みたい!
ゆっくりしたい~!
。゜(゜´Д`゜)゜。
ガス発電で沸かし直しができませんでしたからねぇ。
お風呂の準備だけで、
かなりの労力と時間がかかったことでしょう…。
あ~!温泉入って牛乳飲みたい!
ゆっくりしたい~!
。゜(゜´Д`゜)゜。
クラチー さま
> 昔は現代のように自動でお湯が出たり、
ちョ~お~ ひさしぶり~ (^O^)/
就活の邪魔にならないように、別室に声を掛けるのを遠慮していました。
希望の地で就職できるように頑張ってくださいね!
昔の人は髪が長いし、シャワーはないし、大変だったでしょうね。
> あ~!温泉入って牛乳飲みたい!
これ、これ、美味しいよね♪
大ジョッキーでもいけます)^o^(
> ゆっくりしたい~!
もう少しですからね。
卒論の準備もできているみたいやし・・・。
そうか~。最後の締めくくりは国試もあったネ。
春がくると、状況が一遍しますよ!!
ちョ~お~ ひさしぶり~ (^O^)/
就活の邪魔にならないように、別室に声を掛けるのを遠慮していました。
希望の地で就職できるように頑張ってくださいね!
昔の人は髪が長いし、シャワーはないし、大変だったでしょうね。
> あ~!温泉入って牛乳飲みたい!
これ、これ、美味しいよね♪
大ジョッキーでもいけます)^o^(
> ゆっくりしたい~!
もう少しですからね。
卒論の準備もできているみたいやし・・・。
そうか~。最後の締めくくりは国試もあったネ。
春がくると、状況が一遍しますよ!!
No title
いよいよ脇差(?)腰に、銭湯へ、ですね。
風呂吹き大根ってのは、そうか、蒸し風呂から来てるんでしょうか。大根を蒸すような調理法なんでしょう?
茶の湯に招かれた時も、当時は何よりの御馳走が「風呂」だったとか。
うん。亭主の顔より、風呂の方がサッパリスッキリ、ですよね。
風呂吹き大根ってのは、そうか、蒸し風呂から来てるんでしょうか。大根を蒸すような調理法なんでしょう?
茶の湯に招かれた時も、当時は何よりの御馳走が「風呂」だったとか。
うん。亭主の顔より、風呂の方がサッパリスッキリ、ですよね。
再起SR400 さま
いつもありがとうございます♪
> いよいよ脇差(?)腰に、銭湯へ、ですね。
逸話のなかでは、超有名ですよね!
> 風呂吹き大根ってのは、そうか、蒸し風呂から来てるんでしょうか。
大根を蒸すような調理法なんでしょう?
「風呂吹き大根」は知りませんでした。
間違いなく、そうなんでしょう!
> 茶の湯に招かれた時も、当時は何よりの御馳走が「風呂」だったとか。
> うん。亭主の顔より、風呂の方がサッパリスッキリ、ですよね。
お茶の前にお風呂だったようですね。
当時は、お茶とお風呂は贅沢なものだったのでしょう。
松風を盗んだのも、お茶に誘って、「先にお風呂をどうぞ」という逸話に
なっていますよね。
慶次郎は高齢だったにも関わらず、あまりにも悪戯な逸話が多いので、
ハテと思ったりしませんか。
> いよいよ脇差(?)腰に、銭湯へ、ですね。
逸話のなかでは、超有名ですよね!
> 風呂吹き大根ってのは、そうか、蒸し風呂から来てるんでしょうか。
大根を蒸すような調理法なんでしょう?
「風呂吹き大根」は知りませんでした。
間違いなく、そうなんでしょう!
> 茶の湯に招かれた時も、当時は何よりの御馳走が「風呂」だったとか。
> うん。亭主の顔より、風呂の方がサッパリスッキリ、ですよね。
お茶の前にお風呂だったようですね。
当時は、お茶とお風呂は贅沢なものだったのでしょう。
松風を盗んだのも、お茶に誘って、「先にお風呂をどうぞ」という逸話に
なっていますよね。
慶次郎は高齢だったにも関わらず、あまりにも悪戯な逸話が多いので、
ハテと思ったりしませんか。
No title
慶次郎という人は、あんまり細かなことが記録にないんだそうですね。
それを、短編にでも仕上げた、海音寺潮五郎も、単行本にしてしまった隆慶一郎も大変な人だなあ、と思います。
まあ、前田慶次郎という文字通りのやんちゃ坊主を題材にすれば、何書いてもOK、みたいな気もしますが。
島津家臣の中馬大蔵と違って、和歌をたしなみ、古典に通暁している前田慶次郎、やんちゃにも教養が溢れていますね。
続きが楽しみです。
それを、短編にでも仕上げた、海音寺潮五郎も、単行本にしてしまった隆慶一郎も大変な人だなあ、と思います。
まあ、前田慶次郎という文字通りのやんちゃ坊主を題材にすれば、何書いてもOK、みたいな気もしますが。
島津家臣の中馬大蔵と違って、和歌をたしなみ、古典に通暁している前田慶次郎、やんちゃにも教養が溢れていますね。
続きが楽しみです。
再起SR400 さま
こんばんわ~
慶次郎がお気に入りのようですね☆
記録が残るのは、大名クラスのみでしょうね。
特に女性の記録は皆無なのではないでしょうか!
米沢の堂森で慶次郎を感じてきましたよ。
後日、記事にいますね♪
慶次郎がお気に入りのようですね☆
記録が残るのは、大名クラスのみでしょうね。
特に女性の記録は皆無なのではないでしょうか!
米沢の堂森で慶次郎を感じてきましたよ。
後日、記事にいますね♪