「夫への愛を貫きとおしたガラシャの娘」 その26
『実家に帰される於長』
秀吉と秀次が争う。
仮にそういう事態になったとして、どちらの味方をするのがいいのか。
答えは、ひとつです。
秀吉だ。秀次だと答える者はいない。
誓書になんの意味があるというのか。
豊臣秀次(1568-1595年)

なのに、不安におののいた秀次は誓書というのを思い立ち、長重ら側近に誓書を差し出すように
いい、さらに諸将諸侍にも誓書をもらってこいと命じた。
長重はもちろん逆らった。
「誓書に意味はありません。またそのことが太閤殿下に知れたらただではすみません」
秀次は眉を引きつらせていう。
「口答えを致すな。余の命じたとおりにすればよい」
長重は側近の家来です。
それ以上は逆らえずに従ったが、恐れていた結果を迎えることになった。
屋敷に帰り着くと。
「一大事にござります」
長重が帰って来るのをいまや遅しと待ちかねていた家来がいう。長重がいう。
「父上の身になにかあったのか」
「そうです。伏見の屋敷から使いがあり、所領を返上して、御沙汰があるまで伏見の屋敷で蟄居
するとのことです」
「ついては、於長殿を実家にお返しするようにと」
「そのこと、於長には?」
「まだ申しておりませぬ。若殿からおっしゃってください」
長重は於長の部屋に向かう。
「いよいよ、来るべきときがきた」
於長は従容としていう。
「わたしもお供つかまつります」
「古来、夫になにかあったからといって、妻が夫の供をするという仕来りはない。また、そなたを
実家に帰すようにとの父上からのことづてだ。舅(忠興)殿は伏見の屋敷におられる。伏見の屋敷
にお届けする。支度をするがよい」
於長の目にはみるみる涙があふれ、泣き崩れる。
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いつもありがとうございます。

<参考文献:戦国女人抄おんなのみち(佐藤雅美著)>
秀吉と秀次が争う。
仮にそういう事態になったとして、どちらの味方をするのがいいのか。
答えは、ひとつです。
秀吉だ。秀次だと答える者はいない。
誓書になんの意味があるというのか。
豊臣秀次(1568-1595年)

なのに、不安におののいた秀次は誓書というのを思い立ち、長重ら側近に誓書を差し出すように
いい、さらに諸将諸侍にも誓書をもらってこいと命じた。
長重はもちろん逆らった。
「誓書に意味はありません。またそのことが太閤殿下に知れたらただではすみません」
秀次は眉を引きつらせていう。
「口答えを致すな。余の命じたとおりにすればよい」
長重は側近の家来です。
それ以上は逆らえずに従ったが、恐れていた結果を迎えることになった。
屋敷に帰り着くと。
「一大事にござります」
長重が帰って来るのをいまや遅しと待ちかねていた家来がいう。長重がいう。
「父上の身になにかあったのか」
「そうです。伏見の屋敷から使いがあり、所領を返上して、御沙汰があるまで伏見の屋敷で蟄居
するとのことです」
「ついては、於長殿を実家にお返しするようにと」
「そのこと、於長には?」
「まだ申しておりませぬ。若殿からおっしゃってください」
長重は於長の部屋に向かう。
「いよいよ、来るべきときがきた」
於長は従容としていう。
「わたしもお供つかまつります」
「古来、夫になにかあったからといって、妻が夫の供をするという仕来りはない。また、そなたを
実家に帰すようにとの父上からのことづてだ。舅(忠興)殿は伏見の屋敷におられる。伏見の屋敷
にお届けする。支度をするがよい」
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<参考文献:戦国女人抄おんなのみち(佐藤雅美著)>
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