島津義弘の関ヶ原 その171
『必死は必生につながる その7』
高揚しきった八十島は自身の非礼に気づかない。
馬から下りず、流れるような弁舌を長々と続けた。
島津軍陣所跡

「にわかに霧も晴れ、合戦の法螺貝は鳴りもうした。また再三再四、西軍総攻撃の狼煙も上げまして
ござる。聞こえませぬか。見えませぬか。屈強の島津さまにおいて、何をためらうことがありましょ
うや。わが石田軍勢の果敢な突撃により、東軍の足並みは乱れておりまする。今こそ好機、島津隊が
立ち上がって柵内より連射し、猛攻を開始すれば・・・」
八十島の長広舌がとぎれた。
「不埒者、死ねや!」
物頭の原蔵人が抜刀して、三成の使番に斬りつけようとした。
一本気の原は、八十島の不遜な口上を聞いて激昂したらしい。
八十島はひるみ、蒼ざめて顔で言った。
「何をなさる、狂われたか。われは西軍総参謀・石田三成さまの軍使なるぞ」
「その方こそ物狂いじゃ。軍礼を忘れて馬上から助成を督促するとは。長居すれば、この豊久が斬り
捨てる」
「許されよ。心得ちがいでござった」
高揚した心が瞬時に凍りついた。あわてて馬首をまわし、ガチガチと奥歯を鳴らしながら駆け去った。
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いつもありがとうございます。

<参考文献:島津義弘(加野厚志・Wikipedia>
高揚しきった八十島は自身の非礼に気づかない。
馬から下りず、流れるような弁舌を長々と続けた。
島津軍陣所跡

「にわかに霧も晴れ、合戦の法螺貝は鳴りもうした。また再三再四、西軍総攻撃の狼煙も上げまして
ござる。聞こえませぬか。見えませぬか。屈強の島津さまにおいて、何をためらうことがありましょ
うや。わが石田軍勢の果敢な突撃により、東軍の足並みは乱れておりまする。今こそ好機、島津隊が
立ち上がって柵内より連射し、猛攻を開始すれば・・・」
八十島の長広舌がとぎれた。
「不埒者、死ねや!」
物頭の原蔵人が抜刀して、三成の使番に斬りつけようとした。
一本気の原は、八十島の不遜な口上を聞いて激昂したらしい。
八十島はひるみ、蒼ざめて顔で言った。
「何をなさる、狂われたか。われは西軍総参謀・石田三成さまの軍使なるぞ」
「その方こそ物狂いじゃ。軍礼を忘れて馬上から助成を督促するとは。長居すれば、この豊久が斬り
捨てる」
「許されよ。心得ちがいでござった」
高揚した心が瞬時に凍りついた。あわてて馬首をまわし、ガチガチと奥歯を鳴らしながら駆け去った。
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