加藤清正 Ⅱ その33
『暴れる久兵衛』
たちまち、ひとりの見物人と肩が触れ合った。
「なにをする!」
と、どなった時には、もう突き飛ばしていた。
長浜城(模擬天守)

「やい、やい、やい! 何のうらみがあって、おれの肩を小突きおった!」
相手はあっけにとられながらも、おずおずという。
「おれ、こづきはせんがな。あんたの方から突き当たって、突き飛ばしはったのがや」
酔狂人に対しては、強い態度で出るのが一番よいが、それが出来なければ、逃げ出すよい。
中途半端な態度では、益々酔狂を挑発するだけなのです。
この場合、弱々しく抗議するという最も知烈な態度に出たから、市足久兵衛は目をむいた。
「うぬは、おれを小突きまわし、突き飛ばしながら、罪を俺にきせようというのか!」
と、どなり立てると、胸ぐらをつかんで殴りつけ、突き飛ばした。
突き飛ばされた相手は、ちょうど来かかった踊りの群れにたおれかかった。
人々は一部始終を見ている。久兵衛が悪いのです。
「阿保ンだれ! このめでたい日に、なんちゅうことをさらすのじゃい!こらしめたれ!」
と、叫びかわすと、女子供は家に逃げ込んで、ばたばたと戸を閉め、屈強な若者だけが残って、石こ
ろを掴んでは投げつけ、手桶の水をぶっかけ始めた。
春とはいえ、早春の湖北はまだ冬と同じです。ずぶ濡れにされて酔いはさめたが、乱暴な性質はカッ
と激情した。
「クソたれども!卑怯千万」
と、絶叫し、暴れはじめた。
腕は立つのです。4、5人を斬って一層あれ狂った。
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いつもありがとうございます。

<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
たちまち、ひとりの見物人と肩が触れ合った。
「なにをする!」
と、どなった時には、もう突き飛ばしていた。
長浜城(模擬天守)

「やい、やい、やい! 何のうらみがあって、おれの肩を小突きおった!」
相手はあっけにとられながらも、おずおずという。
「おれ、こづきはせんがな。あんたの方から突き当たって、突き飛ばしはったのがや」
酔狂人に対しては、強い態度で出るのが一番よいが、それが出来なければ、逃げ出すよい。
中途半端な態度では、益々酔狂を挑発するだけなのです。
この場合、弱々しく抗議するという最も知烈な態度に出たから、市足久兵衛は目をむいた。
「うぬは、おれを小突きまわし、突き飛ばしながら、罪を俺にきせようというのか!」
と、どなり立てると、胸ぐらをつかんで殴りつけ、突き飛ばした。
突き飛ばされた相手は、ちょうど来かかった踊りの群れにたおれかかった。
人々は一部始終を見ている。久兵衛が悪いのです。
「阿保ンだれ! このめでたい日に、なんちゅうことをさらすのじゃい!こらしめたれ!」
と、叫びかわすと、女子供は家に逃げ込んで、ばたばたと戸を閉め、屈強な若者だけが残って、石こ
ろを掴んでは投げつけ、手桶の水をぶっかけ始めた。
春とはいえ、早春の湖北はまだ冬と同じです。ずぶ濡れにされて酔いはさめたが、乱暴な性質はカッ
と激情した。
「クソたれども!卑怯千万」
と、絶叫し、暴れはじめた。
腕は立つのです。4、5人を斬って一層あれ狂った。
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<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
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