加藤清正 Ⅱ その34
『家(や)ごもり』
市足久兵衛は完全に狂気状態になった。
一軒の戸をこじ開けて入りこみ、家人らを追い払って、立てこもってしまった。
「入って来てみろ! ひとり残らず、たたき斬ってくれるぞ」
と、怒鳴って人々を威嚇した。
長浜城本丸跡

こういうのを、当時は「家(や)ごもりもの」または単に「こもりもの」と言った。
人の気も荒々しい時代ですから、よくあったという。
こうなっては、町の者では手におえない。
人々は奉行所に行って訴えた。
奉行所からつかわされた下役人は、久兵衛の妻を連れて、久兵衛が籠っている家の前に行き、出て
来て尋常におさばきを受けなければ、妻の身に迷惑がおよぶであろうと言い、妻からも諫めさせた
が、久兵衛はきかない。
「卑怯なことをするわい。それがお奉行のなさることか」
と、役人らをののしり、妻に対しては
「何ば役人に言われたかて、おれは男の意地で家ごもりをしているんじゃ! くだらんことを言わ
んで、あっちへ行けい」
と叱りつけ、少しも心を動かす様子が見えない。
説得で行かなければ、力ずくでやるよりほかはない。
役人らは久兵衛の妻を連れ去っておいて、その家を取り囲んだ。
大きな丸太を担いできて、数人で戸をつき破りにかかった。
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いつもありがとうございます。

<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
市足久兵衛は完全に狂気状態になった。
一軒の戸をこじ開けて入りこみ、家人らを追い払って、立てこもってしまった。
「入って来てみろ! ひとり残らず、たたき斬ってくれるぞ」
と、怒鳴って人々を威嚇した。
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こういうのを、当時は「家(や)ごもりもの」または単に「こもりもの」と言った。
人の気も荒々しい時代ですから、よくあったという。
こうなっては、町の者では手におえない。
人々は奉行所に行って訴えた。
奉行所からつかわされた下役人は、久兵衛の妻を連れて、久兵衛が籠っている家の前に行き、出て
来て尋常におさばきを受けなければ、妻の身に迷惑がおよぶであろうと言い、妻からも諫めさせた
が、久兵衛はきかない。
「卑怯なことをするわい。それがお奉行のなさることか」
と、役人らをののしり、妻に対しては
「何ば役人に言われたかて、おれは男の意地で家ごもりをしているんじゃ! くだらんことを言わ
んで、あっちへ行けい」
と叱りつけ、少しも心を動かす様子が見えない。
説得で行かなければ、力ずくでやるよりほかはない。
役人らは久兵衛の妻を連れ去っておいて、その家を取り囲んだ。
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<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
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