加藤清正 Ⅱ その82
『武士のなさけ』
秀吉も涙を流しながら
「山中の心、まことに見事である。武将たる者の鏡ともすべきものじゃ。かかる見事な者を死なせ
ねばならぬこと、おしみてもあまりがある。そなたにとっては、山中は舅でもある。その方の心を
思えば、これまた忍びぬものがある。さりながら、山中が言うところ、まことに真理である。ここ
はあきらめて、山中の志を成し遂げさせるこそ、かえって武士の情けであろうのう・・・」
と言って、また目をおさえた。
月山富田城の鹿之助

わきに侍していて、虎之介は熱いものが胸に満ち、熱い涙があとからあとからと溢れてきて、嗚咽
になりそうであった。
市松も同じ思いであろう、まぶたを覆っているこぶしをこぼれて、涙が灯火に光りながらしたたって
いた。
佐吉もそこにいたが、これはほんの少ししか泣かない。
色白の痩せた顔をうつむけながら、白い指先で目頭をおさえているだけであった。
この間に、夜はすっかり明けた。
秀吉は諸勢に指図を下して、陣ばらいにかかった。
一時にどっと退いては、敵が追撃して来た場合、総くずれになる。
部署を定め、殿(しんがり)を両隊おき、安心できる地点まで、相互に退いて行くのが法なのです。
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いつもありがとうございます。

<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
秀吉も涙を流しながら
「山中の心、まことに見事である。武将たる者の鏡ともすべきものじゃ。かかる見事な者を死なせ
ねばならぬこと、おしみてもあまりがある。そなたにとっては、山中は舅でもある。その方の心を
思えば、これまた忍びぬものがある。さりながら、山中が言うところ、まことに真理である。ここ
はあきらめて、山中の志を成し遂げさせるこそ、かえって武士の情けであろうのう・・・」
と言って、また目をおさえた。
月山富田城の鹿之助

わきに侍していて、虎之介は熱いものが胸に満ち、熱い涙があとからあとからと溢れてきて、嗚咽
になりそうであった。
市松も同じ思いであろう、まぶたを覆っているこぶしをこぼれて、涙が灯火に光りながらしたたって
いた。
佐吉もそこにいたが、これはほんの少ししか泣かない。
色白の痩せた顔をうつむけながら、白い指先で目頭をおさえているだけであった。
この間に、夜はすっかり明けた。
秀吉は諸勢に指図を下して、陣ばらいにかかった。
一時にどっと退いては、敵が追撃して来た場合、総くずれになる。
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<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
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