加藤清正 Ⅱ その85
『尼子勢降伏』
勝久はうなずいて
尼子勝久(1553-1578年)

「わしは尼子の末家に生まれた者であるばかりでなく、一旦は仏門に帰し、世捨人となっていた身
だ。そなたのおかげで、還俗し、尼子の当主となり、先年は数万の軍勢を率いて本国で戦うことま
で出来た。武門に生まれた者として、本望しごくのことであった。されば、今この身となっても、
そなたに感謝こそすれ、少しも恨む心はない。士卒の命に代わることが出来るなら、この上のこと
はない。よろこんで死ぬぞ。そなたの尼子家に対する忠節は、今はもう末代までの語り草となるで
あろう。もう尽くすことはいらぬ。この上は末永くながらえて、自らのために生きてくれるように」
と言った。
鹿之助は、にっこり笑った。
「いや、いや、拙者も長くは生き申さぬ。やがて追いついてお供申します。ほんのしばらく拝借する
だけの命でござる。大方、三途の川あたりでは、追いつき申すでありましょう故、ぼつぼつとお出か
けくだされるよう、願い申します」
「さようか。ともかくも、そなたのよきように」
鹿之助は勝久の名で毛利勢に降伏を申し込んで、切腹して士卒の命に代わりたいと申しおくった。
毛利勢は承知した。
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いつもありがとうございます。

<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
勝久はうなずいて
尼子勝久(1553-1578年)

「わしは尼子の末家に生まれた者であるばかりでなく、一旦は仏門に帰し、世捨人となっていた身
だ。そなたのおかげで、還俗し、尼子の当主となり、先年は数万の軍勢を率いて本国で戦うことま
で出来た。武門に生まれた者として、本望しごくのことであった。されば、今この身となっても、
そなたに感謝こそすれ、少しも恨む心はない。士卒の命に代わることが出来るなら、この上のこと
はない。よろこんで死ぬぞ。そなたの尼子家に対する忠節は、今はもう末代までの語り草となるで
あろう。もう尽くすことはいらぬ。この上は末永くながらえて、自らのために生きてくれるように」
と言った。
鹿之助は、にっこり笑った。
「いや、いや、拙者も長くは生き申さぬ。やがて追いついてお供申します。ほんのしばらく拝借する
だけの命でござる。大方、三途の川あたりでは、追いつき申すでありましょう故、ぼつぼつとお出か
けくだされるよう、願い申します」
「さようか。ともかくも、そなたのよきように」
鹿之助は勝久の名で毛利勢に降伏を申し込んで、切腹して士卒の命に代わりたいと申しおくった。
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