加藤清正 Ⅱ その87
『近習たちの批評』
佐吉は
「さて、どんなものかの。鹿之助のような浪人ずれして、名を売ることばかりして、渡世して来たも
のは、案外、ふみしめたものはないものというぞ。世を忘れ、僧となって安穏に暮らしている人を引
きずり出し、さんざ引きまわしたあげく、腹切らせながら、雑兵とともにのめのめと命を助かるばか
りか、ひとりだけ5千石の知行を受けたのは、わしは何とも合点がいかぬ」
と、さかしげに言った。
市松(福島正則)(1561-1624年)

「ばかをぬかせ! 鹿之助殿ほどの人が、きたない了見であるものか」
と、市松は真っ赤になって腹を立て、虎之介に
「虎之介、汝(われ)はどう思う」
と、意見を求めた。
「おれな汝と同じ意見じゃ。人はかねてが大事じゃ。鹿之助殿のふだんの所行と、最後に尼子殿
に言われた言葉を考え合わせると、市松の言うことが当たっていると思う」
と、虎之介は言った。
佐吉はせせら笑うような風で
「まあ、よいわ。今にわかることじゃ」
と言った。
「おお、今にわかることよ」
と、市松は荒々しく息まいた。
それから間もなく、西に向かって連れ去られた鹿之助の最後のことが噂となって伝わってきた。
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いつもありがとうございます。

<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
佐吉は
「さて、どんなものかの。鹿之助のような浪人ずれして、名を売ることばかりして、渡世して来たも
のは、案外、ふみしめたものはないものというぞ。世を忘れ、僧となって安穏に暮らしている人を引
きずり出し、さんざ引きまわしたあげく、腹切らせながら、雑兵とともにのめのめと命を助かるばか
りか、ひとりだけ5千石の知行を受けたのは、わしは何とも合点がいかぬ」
と、さかしげに言った。
市松(福島正則)(1561-1624年)

「ばかをぬかせ! 鹿之助殿ほどの人が、きたない了見であるものか」
と、市松は真っ赤になって腹を立て、虎之介に
「虎之介、汝(われ)はどう思う」
と、意見を求めた。
「おれな汝と同じ意見じゃ。人はかねてが大事じゃ。鹿之助殿のふだんの所行と、最後に尼子殿
に言われた言葉を考え合わせると、市松の言うことが当たっていると思う」
と、虎之介は言った。
佐吉はせせら笑うような風で
「まあ、よいわ。今にわかることじゃ」
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「おお、今にわかることよ」
と、市松は荒々しく息まいた。
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