加藤清正 Ⅱ その161
『清正の説明』
「仰せられる趣き、道理であります。わたくしどももそう思いまして、不安でなりませんので、市松
と2人で、黒田官兵衛さまにお尋ね申したところ、官兵衛さまはからからと笑って仰せられました。」
清正の家紋(蛇の目紋)

「柴田が殿様と戦いたがっている以上に、殿様は柴田と戦いたがっておいでじゃとは思わぬか。殿様
は今、天下人への道を歩き出されているのじゃが、その道は決して真ッ平ではないぞ。邪魔者がたん
とあって、それをひとつ、ひとつ打ちくだきながら行きなさらねばならんが、その第一に現れて来る
邪魔者が、柴田勝家という男じゃ。じゃまものは早うのけたがよい。そのために、柴田が早う出て来
やすいように、出口を開けなさったというわけ。心配することはないぞ。わいらが殿様は、日本一の
知恵者じゃ。先の先まで見抜いてなさる。柴田如きに致されるはずがあるか」
と、言われて、わたくしどもも
「なるほど、その通りでございますな。と、心配は朝の霧が日の光と風で散るようになくなりました。
ご隠居様も、ご前様も、そうお考えあってご安心くださいますよう」
秀吉の母も、ねねも、得心が行って、大いに安心したので、清正は辞去のあいさつを述べた。
「おお、おお、それでは京に帰りなさる時、また寄ってたもれ。あ、ちょっと待ちゃ」
秀吉の母は、奥に入って、巻絹と真綿とを持って出て来た。
「母ごに、わしからというて、とどけてたも。おいおい夜寒になることゆえ、胴着にでもして着なさ
るようにとな。前はよくお出でであったが、この頃はちょと途絶えている。時々は顔を見せてたもれ
と申したと伝えてたも」
老人らしいくどさだが、情愛がじかに胸に暖かかった。
かたじけなくいただいて、本丸を出た。
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いつもありがとうございます。

<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
「仰せられる趣き、道理であります。わたくしどももそう思いまして、不安でなりませんので、市松
と2人で、黒田官兵衛さまにお尋ね申したところ、官兵衛さまはからからと笑って仰せられました。」
清正の家紋(蛇の目紋)

「柴田が殿様と戦いたがっている以上に、殿様は柴田と戦いたがっておいでじゃとは思わぬか。殿様
は今、天下人への道を歩き出されているのじゃが、その道は決して真ッ平ではないぞ。邪魔者がたん
とあって、それをひとつ、ひとつ打ちくだきながら行きなさらねばならんが、その第一に現れて来る
邪魔者が、柴田勝家という男じゃ。じゃまものは早うのけたがよい。そのために、柴田が早う出て来
やすいように、出口を開けなさったというわけ。心配することはないぞ。わいらが殿様は、日本一の
知恵者じゃ。先の先まで見抜いてなさる。柴田如きに致されるはずがあるか」
と、言われて、わたくしどもも
「なるほど、その通りでございますな。と、心配は朝の霧が日の光と風で散るようになくなりました。
ご隠居様も、ご前様も、そうお考えあってご安心くださいますよう」
秀吉の母も、ねねも、得心が行って、大いに安心したので、清正は辞去のあいさつを述べた。
「おお、おお、それでは京に帰りなさる時、また寄ってたもれ。あ、ちょっと待ちゃ」
秀吉の母は、奥に入って、巻絹と真綿とを持って出て来た。
「母ごに、わしからというて、とどけてたも。おいおい夜寒になることゆえ、胴着にでもして着なさ
るようにとな。前はよくお出でであったが、この頃はちょと途絶えている。時々は顔を見せてたもれ
と申したと伝えてたも」
老人らしいくどさだが、情愛がじかに胸に暖かかった。
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<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
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