加藤清正 Ⅱ その167
『母に近況を説明』
初更(午後9時)を過ぎる頃、宴を終わり、母子だけになった。
清正は母の問いにまかせて、山崎合戦の話や、清須会議のことを語った。
北ノ庄城の柴田勝家公

秀吉の前の居城のあった江州長浜が、柴田勝家の要求によって、柴田に譲られたことも話した。
長浜は母子が秀吉を頼って行ったところであり、母子がはじめて生活の安定を得たとことです。
お沢は心残りであった。
「修理亮(柴田勝家)殿は、またどうして所望なさったのでしょう」
と尋ねたのも、その心残りのためであった。
「柴田はいずれは殿様と戦うつもりなのです。長浜が殿様のものであっては、出口を塞がれた形にな
って、こちらに出て来ることが出来ないからです」
「あれまあ! それでは柴田殿は殿様と合戦なさる気でいなさるのですかえ」
と、お沢は驚いた。
「そうです!」
大きな声で力強く言って、清正は説明した。
「織田右府様のお後継はお孫である三法師様と決まりましたが、天下人はまだ誰とも決まっていませ
ん。右府様のご家来衆の中では、殿様と柴田殿とが力をお持ちです。2人のうちいずれかが天下人と
なられるのです。万人が皆そう申しています。お2人は戦いをなさらなければならないのです。もっ
とも、わたくしは殿様がお勝ちになって、天下人になられることを信じています。わかくしだけがそ
う考えているのではなく、世間の人おおかたがそう言っています。殿様はえらいお人ですぞ」
お沢は秀吉がえらいお人だと思っていたものの、天下人になると思ったことがなかった。
けれど、虎之介がそういうのを聞いていると、母親の愛情が信じさせる。
「そうかえ、そうかえ。そうじゃろうのう、えらいお人じゃからのう」
と、心から頷いた。
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いつもありがとうございます。

<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
初更(午後9時)を過ぎる頃、宴を終わり、母子だけになった。
清正は母の問いにまかせて、山崎合戦の話や、清須会議のことを語った。
北ノ庄城の柴田勝家公

秀吉の前の居城のあった江州長浜が、柴田勝家の要求によって、柴田に譲られたことも話した。
長浜は母子が秀吉を頼って行ったところであり、母子がはじめて生活の安定を得たとことです。
お沢は心残りであった。
「修理亮(柴田勝家)殿は、またどうして所望なさったのでしょう」
と尋ねたのも、その心残りのためであった。
「柴田はいずれは殿様と戦うつもりなのです。長浜が殿様のものであっては、出口を塞がれた形にな
って、こちらに出て来ることが出来ないからです」
「あれまあ! それでは柴田殿は殿様と合戦なさる気でいなさるのですかえ」
と、お沢は驚いた。
「そうです!」
大きな声で力強く言って、清正は説明した。
「織田右府様のお後継はお孫である三法師様と決まりましたが、天下人はまだ誰とも決まっていませ
ん。右府様のご家来衆の中では、殿様と柴田殿とが力をお持ちです。2人のうちいずれかが天下人と
なられるのです。万人が皆そう申しています。お2人は戦いをなさらなければならないのです。もっ
とも、わたくしは殿様がお勝ちになって、天下人になられることを信じています。わかくしだけがそ
う考えているのではなく、世間の人おおかたがそう言っています。殿様はえらいお人ですぞ」
お沢は秀吉がえらいお人だと思っていたものの、天下人になると思ったことがなかった。
けれど、虎之介がそういうのを聞いていると、母親の愛情が信じさせる。
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<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
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