加藤清正 Ⅱ その266
『肝に毛が生えている』
「危ないぞ! これ、待て!」
と、叫んだが、振り返りもせず
「剛の者には矢玉はあたらぬものでござる!」
と呼び返して、真一文字に敵に飛んでいく。
敵は気づいて、弾丸を放った。
飯田覚兵衛の墓(熊本市)

覚兵衛の足元には弾丸が砂煙を上げ、周りには羽虫のように矢が集まった。
味方の兵士らは、うめくような声を上げて、肝を冷やしたが、覚兵衛は少しもたじろがず、なお進
んで、畑を横切って堤にたどり着いたかと思うと、その陰におどりこんだ。
矢玉は変わらず周りに集まるが、覚兵衛は矢玉の隙をはからっては、首をもたげて敵の様子を伺う。
この様子を見て、堀尾茂助がやって来た。
「何をしとるのじゃ」
「どうやら、敵は武士ではなく、駆りもよおされた郷民ばらの一揆のように思えますので、見極める
ために遣わしたのです」
堀尾はしばらく凝視して
「肝に毛が生えているようなやつじゃのう、誰じゃ」
と聞いた。
「飯田覚兵衛でございます」
堀尾の方が年長でもあれば、身分も上です。
「飯田か」
堀尾はため息をついた。驚嘆と羨望のあまりであるようであった。
やがて、飯田は矢玉のすきを見、ぱっとおどりだすと、飛ぶように走り帰ってきた。
ランキングに参加しています

いつもありがとうございます。

<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
「危ないぞ! これ、待て!」
と、叫んだが、振り返りもせず
「剛の者には矢玉はあたらぬものでござる!」
と呼び返して、真一文字に敵に飛んでいく。
敵は気づいて、弾丸を放った。
飯田覚兵衛の墓(熊本市)

覚兵衛の足元には弾丸が砂煙を上げ、周りには羽虫のように矢が集まった。
味方の兵士らは、うめくような声を上げて、肝を冷やしたが、覚兵衛は少しもたじろがず、なお進
んで、畑を横切って堤にたどり着いたかと思うと、その陰におどりこんだ。
矢玉は変わらず周りに集まるが、覚兵衛は矢玉の隙をはからっては、首をもたげて敵の様子を伺う。
この様子を見て、堀尾茂助がやって来た。
「何をしとるのじゃ」
「どうやら、敵は武士ではなく、駆りもよおされた郷民ばらの一揆のように思えますので、見極める
ために遣わしたのです」
堀尾はしばらく凝視して
「肝に毛が生えているようなやつじゃのう、誰じゃ」
と聞いた。
「飯田覚兵衛でございます」
堀尾の方が年長でもあれば、身分も上です。
「飯田か」
堀尾はため息をついた。驚嘆と羨望のあまりであるようであった。
やがて、飯田は矢玉のすきを見、ぱっとおどりだすと、飛ぶように走り帰ってきた。
ランキングに参加しています

いつもありがとうございます。

<参考文献:海音寺潮五郎「加藤清正」>
- 関連記事
-
- 加藤清正 Ⅱ その268 (2023/09/22)
- 加藤清正 Ⅱ その267 (2023/09/21)
- 加藤清正 Ⅱ その266 (2023/09/20)
- 加藤清正 Ⅱ その265 (2023/09/19)
- 加藤清正 Ⅱ その264 (2023/09/18)
スポンサーサイト